『すずめの戸締まり』感想(〝戸締まり〟という最強の祈りについて)
【扉】
とびら、英: door、ドア
建物や部屋などの入口などにつけられ、開口部を閉じたり、外部と遮断する機能をもつ部分。
ドア(扉)とは、建物、部屋、乗り物などの出入口、あるいは食器棚などの出し入れ口などにつけられ、開口部を閉じたり、内部と外部を遮断する機能をもつ部分のことである。開口部を閉じ、内部空間と外部空間を遮断する役目をする。 望む時にだけ人(や物)が出入りし、望まない時には出入りできないようにはたらく。
特に特定の人だけ出入りできるようにする場合(また特定の人だけ物を出し入れできるようにする場合)は扉に錠(ロック)がつけられる。これにより鍵(キー)を持つ人だけが出入りできる。
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すずめの戸締まりを観た! 最高~~~~~~~~~~~~~~~~めちゃくちゃ好きだった~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
以下作中の扉の扱いを軸にした感想です
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「〝戸締まり〟という最強の祈りについて」
作中、草太さんは「扉を閉める」という言い方をしている。草太さんは閉じ師なので扉は「閉める」ためのものであり、そういう役目であり、その扉を開けることはやってはいけないことで、だからすずめちゃんが扉を開けようとするときには「開けてはいけない!」って必死で止めようとしてる。対してすずめちゃんは扉を開けようとする人で、ずっと扉の中に入ろうとしている……
【扉】は、その機能として、内部と外部と遮断する役目を持っている。その機能に焦点を当てるのであれば、扉が開く前に鍵をかけ、完全に内と外とを遮断する閉じ師の行為、役目は「遮断」に重心を置いたものだと考えることができるし、正しい。
正しいんだけども、しかし、でもそれが〝扉〟の形をしているならば「望む時に人や物が出入りし、望まない時には出入りできないようにはたらく」の〝出入りする〟の部分もきちんと機能させないといけないわけで、それを考慮するのならば、草太さんの扉に対する行為は、その【扉】という機能が持つ役目・力の半分だけを使っている状態なのではないだろうか~~~
草太くんの「お返し申す!」(ガチャン!)の鍵閉め、扉に鍵をかけるという行為とセットで使う掛け声としては不思議だな? と思うのは、〝鍵をかける〟という行為と「お返しします」という言葉に、本来ならば接点がないからなのかなと思う。
「お返し申す」は、「今まであなた(方)の土地を人間に使わせてくれてありがとうございます。しかしこの土地にはもう人間はいない(廃墟)ので、お返しします」で、かしこみかしこみ~もいれるから滅茶苦茶に敬意を払って心から祈って捧げた意味なんだけど、同時に扉を閉めて、鍵をかけて完全にシャットアウトするところまでを見るならば、「お返し申す」には「清算」とか「縁を切る」みたいな意味も含まれていると言えそうで、そして草太くんはもう(向こう側から開かない限りは)その扉を開けるつもりがない。
なぜ草太さんが扉に対してただただ〝閉める〟ことのみに焦点を当てているのかっていうと、閉じ師としての役割と、あと常世には現世にいる人間が行くべきではないっていう考え(もしくは閉じ師として教わったこと)が恐らく根拠になっていて、だからすずめちゃんが扉を開けようとするのを開けちゃだめだよって諭したりしようとしている。でもすずめちゃんは行こうとするし、行くし、ちゃんと帰ってくる。
生きるとか死ぬとかは運次第だと12年前から考えているすずめちゃんにとっては、常世は現世と地続きで、多分自分の歩いている道のすぐ横にも常世があって、ちょっと足をずらしたら行けてしまうような場所なのかもしれなくて、それで多分そこに行って悼みたいものがたくさんある。会いたい人もいて、そこからしか始められない未来もあって、あるから、すずめちゃんにとっては扉は〝出入り〟ができるものじゃなければならなくて、だからすずめちゃんは扉を開けていく。〝閉める〟草太くんと〝開く〟すずめちゃんが揃って、扉の機能が本領発揮する。
草太くんの閉じ師としての役目は扉を閉めることだ。廃墟や、二度と動かない遊園地や、何もかもが流されてしまったようながらんどうの場所で、そこに現れた扉の前で、もう失われてどうにもならなくなってしまった全部を悼んで、弔って、ここはもう俺たちは必要としないものだからお返しします、もう帰らないよという、さようならの挨拶をすることが、彼の与えられた使命だったのかなと思う。
すずめちゃんは扉を締めたときに「いってきます」を言っていた。いってきます! ガチャンで〝戸締まり〟をして、いってくるよ、また帰ってくるよ、という意思表示をすることが、扉の向こうにあるものたちのもとへ、また帰ってこれるための一番最強な祈りになるのかもしれない。そうでありますように。
【戸締まり】 と‐じまり
家の戸・窓を閉め、錠などをかけること。「外出の前に―する」
BGM:すずめ(feat. 十明)/ RADWIMPS
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