星に願いを(セン+キョウ)

 偶然に会ったその友人は、記憶の中よりも髪が伸び、落ち着いた大人の女性になっていた。けれど浮かべる表情は、それは三年前と変わらない眩しさで、私は思わず手を取って嬉しさに歓声を上げていた。懐かしさに顔を綻ばせ、近況を報告し合い、またケーキを食べに行こうねと約束を交わし、じゃあまた、とひらりと手を振った彼女に手を大きく振り返して、そしてお互いに背を向けた。

 ああまた携帯電話の番号を聞き忘れてしまった――と、慌てて振り返ったけれど、彼女はもう街の雑踏の中に消えてしまっていた。


 左手で掻き上げた黒髪が、その細い指先の触れるところから金色になっていく。夜が星に溶かされていくようにさらさらと、黒を金糸に染めながら、その女性が――――少年が、そっと沈んだ目を伏せる。

 こうして、君を置いて廻る世界に耐える為に、君の痕跡を残していく。また何度目かの季節の隙間に、彼女の面影をどこかに残す。

 百年、二百年、永遠のような時間の中で、夢を見続ける世界の中心は、その長い眠りの為に、世界が彼女を忘れてしまわないようにと夢に夢を重ねている。

「……なにやってるんだろうなあ、僕は」

 古い公園の丸い遊具で――――まるで地球儀のような形をしたその回旋塔の天辺で、少年は星空を見上げながら呟いた。

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