カチューシャと虚宇介くん
「カチューシャさんは、統和機構の中でも随分と偉い立場だそうですが――そんなあなたにも、上司の人とかはいるんですか?」
「ああん? 上司だァ? 何でこの私が、あんたにそんなこと教えてやらなきゃなんない訳?」
「いや、あなただと、どうにも僕のお願いを聞いてもらえそうにないみたいですから。それならあなたの上司の方にお願いして、あなたに命じてもらう方向に切り替えるのがいいのかな、と」
「あー、いや、無駄無駄。完璧無駄。そーいうぬっるい言い分とか、まるで聞いちゃくんないから。告げ口したって完っ全に無駄だから」
「ああ、やっぱりあなたにも、上司の人がいるんですね。チーフテンは、あなたは他の人の命令を聞かなくてもいい立場だとかって言ってましたけど――それでも一番偉いって訳じゃなくて、あなたよりももっと、ずっと偉い人がいるんだ。絶対に逆らえないような人が」
「……何? カマかけしたくらいでいい気になってんの? あのさあ、言っとくけど、あんたが言ったって無駄ってのはマジの話だからね。つーかあっちが直々に対応してたら、NPスクールの連中なんか問答無用で全員即日処分がオチだから。私よりもよっぽど容赦ないから。それに比べたら、私の方が百億倍話が通じて甘くて優しくて親切なのよ? むしろあんたらは、カチューシャさんが来てくれてよかった、ありがとうございます、って感謝して欲しいくらいな訳。わかる?」
「そんなに怖い人なんですか? その、〝鬼〟なんとかさんは」
「……ハア!? 何でギノルタのこと知ってんのよ!? まさかあんた、マジで告げ口したんじゃ……!」
「いえ。すみません、今のは本当にカマかけでした。あなたがパールさんの話をしてたときに、大物のことを〝超〟とか〝鬼〟とか言ってましたから……〝超〟大物はよく言いますけど、〝鬼〟大物って、あんまりすぐ出てくる言い方じゃないよな、って、少し引っかかって。だから、〝鬼〟のつく人がいるんじゃないかと思ったんです。あなたが大物と思わざるを得ないような人が……上司ってのは思いつきの一つでしたけど、当たったみたいですね」
「あーーーーーっ! マッ! ジッ! でっ! 腹立つッ、コイツ! この私が大人しく命令聞いてんだから、大物に決まってんでしょーが! 告げ口しやがったらマジで承知しないからね!」
「じゃあ、告げ口はしませんから、僕のお願いを聞いてくれます?」
「い、や、に、決、ま、っ、て、ん、で、しょーーーーーがッ! 馬ッ鹿じゃないの! ばーーーーーーか!!」
「やれやれ」
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