最強と猫(ff+酸素)
「よう、おまえ」
「……」
「名前はなんつったか、えーと、変わった名前だったよな。神っぽい……ええと、そうだ。ロキだ。うん、やっぱり変わった名前だな。まあ俺も知り合いにイナズマと名付けたが。知ってるか? イナズマ。あれは北欧神話の雷帝の神、トールから取ったんだ。なかなかいいだろう? おまえの名前も北欧神話から取られたなら、もしかしたらあいつとはうまくやれるかもな。北欧神話では、ロキとトールは結構仲がいいんだ」
「……」
「ところでそこで何をしてんだ? 日向ぼっこかな。ただ丸まってるだけじゃ退屈じゃないか? いや、随分と気持ち良さそうな顔をしているし、もしかしておまえにとったら、そうやってだらだらしていることは楽しくてしょうがないってところなのかな。どうなのかな……そうだ、なあロキ。おまえには退屈ということがわかるか? 俺の周りは弱いやつばっかりで、まったく刺激がないんだよな――退屈でしょうがない。その点おまえは羨ましいよ。そうやってごろごろと日向ぼっこでもしてれば満足なんだろう? 幸せなやつだな。まあ猫なんてのは大体そんなもんか」
「……」
「人間はそうはいかないぞ。基本食うか食われるか――いや、殺すか殺されるかだからな。油断なんてしたらすぐに足元を掬われるから、おまえみたいに何もせず、気楽にのびのびと過ごすわけにはいかねーんだよな。まあ、俺としちゃそれもそれで地獄のよーな気がするんだが。ふむ、そう考えると、人生の良し悪しなんてもんは結局のところ気の持ちようなのかもな。そうだろう?」
「……おい」
「なんだ、いたのかオキシジェン。いるならいると言っておけ」
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